誌上授業 第1回 ―関係代名詞―(2)
前回の記事の続きです。
◆第2章:主格の関係代名詞
今回より、関係代名詞の具体的なお話をしていきましょう。
今回は第2章ということで、主格の関係代名詞についてお話します。
1. 先行詞が「モノ」の場合
次のような2つの文があります。
I have a dog. (=私は犬を飼っています。)
It has long ears. (=それは、長い耳を持っています。)
1つ1つの文は中学1年生レベルの英文ですね。
日本語訳についても、あえて直訳にしました。
ところで、この2文の中で、線を引いた”a dog”と”it”は、同じものを指していますね。
一文目の”a dog”は二文目では代名詞を使って”it”に置き換わっています。
このように、関係代名詞の文を作るときには2つの文の中でイコール関係になる名詞[モノ / 人]があることが条件になります。
そして、これらの文を関係代名詞を使って1つの文にする場合、”I have a dog”までは1文目の語順そのままで書いてしまって構いません。
その後に、関係代名詞を使って2つ目の文の内容を続けることになります。
(つまり、"a dog"を先行詞にするということです。)
ちなみに2文目を書くときは、”It”についてはもう書く必要はありません。
”It”とイコールである”The dog”の方をしっかり書いているからです。
したがって、関係代名詞のあとには"It"を飛ばした”has long ears”のみを書きます。
ちなみにここで使う関係代名詞としては、"which"と"who"という2つの関係代名詞があるのですが、これは先行詞の性質、とりわけ先行詞が「人」を表す語なのか人以外の「モノ」を表す語なのかによって使い分けることになります。
すなわち
先行詞が人以外の「モノ」のときは"which"
先行詞が「人」のときは"who"
を使うことになります。
今回の文については、先行詞が”a dog”なのでこれは「モノ」扱いということになります。
いくら犬も人間と同じ動物であっても、動物を家族同然に大事にしていても動物は英語の世界では「モノ」扱いです。
従って、今回の場合は関係代名詞は"which"を使うことになります。
よって、出来上がる文は
I have a dog which has long ears.
です。
この文の構造を見ていくと
I have a dog [which has long ears].
[ ] の中の部分が全て、”a dog”の説明となっています。
つまり、日本語に訳すときは [ ] の中の部分から訳して、「長い耳をもっている犬(長い耳の犬)」とすると良いでしょう。
全文を訳すと「私は、長い耳の犬を飼っています。」という感じでしょうか。
また、”which”の後の動詞が”have”ではなくて”has”になっているのは、これは直前の”which”という単語があるからではなく、先行詞が三人称単数であるからです。
例えば無理やり、先行詞を”a dog”から”two dogs”に換えた場合、この文は
I have two dogs which have long ears.
となります。
ちなみに、先の文で
I have a dog. (=私は犬を飼っています。)
It has long ears. (=それは、長い耳を持っています。)
の”a dog”と”it”がイコール関係であるのならば、”it”を先行詞にはできないのかと思う人もいるかもしれませんが”it”を先行詞にすると、英文は書きませんが日本語にすると
「私が飼っている(持っている)それは、長い耳をしています。」
という意味になってしまいます。
こうなると「それ」は犬なのか、トカゲなのか、虫なのか、はたまた消しゴムなのかわからなくなってしまいます。もちろんこれではおかしな文になってしまうかと思います。
2. 先行詞が人の場合
それではもう一つ、別の例文を見てみましょう。
The boy is Tom. (=その少年はトムです。)
He is running over there. (=彼は向こうで走っています。)
この2文では、”The boy”と”He”が同一人物であると考えます。
”He”を先行詞にすると先程の、「私が飼っているそれは・・・。」の文と同じような文になってしまいますので、ここでは”The boy”を先行詞とします。
”The boy”はもちろん「人」を表す語ですので
The boy who is running over there is Tom.
「向こうで走っている少年はトムです。」
という文にします。
ここで、先程の2文のイコール関係を
The boy is Tom. (=その少年はトムです。)
He is running over there. (=彼は向こうで走っています。)
と捉えて、
The boy is Tom who is running over there.
とすることも出来そうですが、これだと日本語の意味が
「その少年は、向こうで走っているトムです。」
という意味になってしまいます。
これでは、「トムくんはしている動作によって、全く別人である」ことになってしまいますね。
「朝、寝ているトムくん」と「朝、顔を洗っているトムくん」、「朝、学校に行くトムくん」がどれも全て別の人になってしまうことになるので、これはマズいですよね。
従って、ここでは意味の上でもその少年=彼と考えて、”The boy”を先行詞とするしか無いということです。
こうした”Tom”などの固有名詞は先行詞にはできず、他にも、”my brother”や”your bag”など、所有格の代名詞を含むモノ / 人は先行詞にできません。
ここで改めて、今回解説した関係代名詞を使った文をおさらいしておきましょう。
I have a dog which has long ears.
The boy who is running over there is Tom.
これらの文で、重要なポイントとしては
① 先行詞のあとにすぐ、関係代名詞が使われているということ。
② 関係代名詞は先行詞が人のときは”who”、モノのときは”which”を使う。
③ 関係代名詞の後にすぐ動詞を持ってくること、またその動詞の形は先行詞によっても変化するということ。
④ Tomなどの固有名詞、”my brother”や”your bag”など、所有格の代名詞を含むモノ / 人は先行詞にできないということ。
ということでしょうか。
また、関係代名詞を使ったこうした特徴のある文を「主格の関係代名詞の文」と呼んでいます。
以上をもって、主格の関係代名詞のお話を終わります。
次回は関係代名詞の”that”について、少しお話しましょう。